七月二十一日<室町幕府崩壊>

清伸

「公方様、信長の使者として、木下藤吉郎秀吉と名乗る者が参りました」

義昭

「なに、木下がか、光秀ではないのか」

⇒うーむ、やりにくいな。

秀吉

「公方様、この度のご謀反。許すまじきことと、主君信長も怒っておられます。して、またもや降参とは本心からのお言葉でありましょうや」

義昭

「何、謀反とは何だ。予は将軍であるぞ。将軍が家臣に謀反するなどどこにそんなことが言える。そなたでは話にならぬ。信長にここへ参れと伝えよ。信長ならわかってくれよう」

秀吉

「それは解せません。それともこの度の『降伏する』とは、またや偽りの降伏でござるか。さればその旨主君信長にその通り伝えますが、それでよろしゅうござるか」

義昭

「予は謀反などしておらぬ。お主では話ができぬ」

秀吉

「お黙りなされ、公方様は過日恐れ多くも朝廷が出された和睦の綸旨に叛き、直ぐに旗揚げをされた。これが謀反でなく何でござろうか。また、某は主君信長に命じられた正式の使者でござる。某の言葉は、即ち主君信長の言葉でありますぞ」

義昭

「うーむ、分かった。降伏致す」

秀吉

「致すとは、命令でござるか。お願いでござるか。命令ならば取り次ぐことはできませぬが」

義昭

「ウーム、お願いでござる。宜しく頼む」

秀吉

「お願いならば、その旨主君信長に伝えて参ります。しばらくこのままお待ちくだされ」