第3章 室町幕府の崩壊
3.上京燃える
四月四日<本能寺:信長宿舎>
信長
「ふむ、顕如か、確かにこ奴が立つとうるさい。光秀、義昭様との和睦の調停は進んでいるか」
光秀
「はっ、申し訳ござりませぬ。義昭様は全く意に介さない様子にて、この上は、朝廷にお願いして和睦の綸旨(りんじ)を賜るべく、吉田兼和(かねかず)殿(後の兼見)を通して再三お願いしていますが、もちろん義昭様にも和議に応じるよう申し入れておりますが、それがなかなか……」
信長
「うぬ、手ぬるい。それでは顕如が立ってしまうぞ! 彼奴が立つと我らは武田軍にも囲まれ、退路を断たれてしまう。何としても義昭様と一旦和議を結び、体制を立て直さなければならない。わかった、京に火を放とう! 御所と二条御所の廻りを火の海にしてくれん。さすれば公方も震え上って和睦するであろう!」
光秀
「えっ、京に火を放つのですか。上様! 火を放つのわかりましたが、何卒、京全域に火を放つのはお控えください」
信長
「誰が京全域と申した。御所と二条城の廻り、上京に火をかけよ。こやつらは朝廷や将軍にへつらい、甘い汁を吸っている連中が多く住んでいる所だ。何の懸念がある。なお、細川と荒木は光秀の与力として、光秀と共に行動せよ」
⇒重臣二人の寝返りで義昭も大いに困っているであろう。されど韓非子の教えに「一度謀叛した者は二度もある。油断するべからず」とある。従って、この二人には心を許してはならん。光秀に預けて監視すべしじゃ……。