爽やかさとユーモア。そして、けっこう熱い! それらが混在している人だ。

そう気づいたのは最近のことではあるが、実際に顧客との関わり方一つ取っても、清濁併せ吞むようなバランス感覚に優れた人柄が、僕にはとても新鮮に感じられた。

南牟婁郵便局は、「集配特定局」と呼ばれる南牟婁地区の配達を受け持つ、規模の小さな郵便局である。正社員数は局長を含め七名で、二名のアルバイト職員がいた。外勤の正職員は三名であったが、その外務職員の一名が急に依願退職をした。

そのため、正職員の定員補充が間に合わず、そこで母の知人を通じて、僕にアルバイトの欠員補充の誘いがかかったのである。丁度、再就職のあても無いままに故郷に戻って来た身としては、

(一先ず、稼ぐ必要がある……)

やりたい仕事が見つかるまでの繋ぎのつもりで面接を受け、臨時採用となったのは、四月中旬のことであった。

南牟婁郵便局は、郵便集配業務の他に、郵便貯金や簡易保険といった金融業務の取り扱いもある。

そのため国の機関である郵便局では、郵便や金融業務でのすべての出納金については、「出納官吏」と呼ばれる現金の出入りを管理する職員が必ず指定されていた。

「すいとう……かんし!?」

僕が漢字で書かれた出納官吏という役職をそう読むと、

「すいとうかんり」

笑いながら局長代理の久保から訂正された。

「出納官吏」と書いて、それを「すいとうかんり」と読むんだ。以来、その名称の響きがいかにも「公務員的」だとずっと感じていた。が、実際に「公務として働くこと」の意味を、真剣に考えるようになるのは、古山局長の講話を聴いた後のことである。

南牟婁郵便局には、毎朝八時一五〜二十分前後に、東紀州の拠点郵便局である「鷲羽郵便局」から郵便物が届く。

すると外務職員は、鷲羽郵便局からのブルーのファイバー(青いプラスチック箱)に入った地区内宛ての「普通郵便物」を、郵便区分棚と呼ばれる縦5口×横9口の区分棚で個別の住所に区分し、更に配達の順番に並べていく。

南牟婁郵便局にはこの5口×9口=45口の郵便区分棚が二台置かれていた。一台につき一区域の配達順路で構成されている。つまり南牟婁郵便局の配達エリアは、二つに分けられていた。

これを到着した郵便物量の多少によって、二名〜三名の外務職員が、順路に従って郵便物の配達をおこなうのである。

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