3 医学部教養で自由な学習

⑦  心の健康を保とう

ここで精神科の授業で、印象的だった内容を紹介します。

精神的な活動には、周期的な変化を示すことが多いようです。気分的に高揚する時期から、落ち込んでしまう時期もあります。

他方、行動力についても同様で、行動的な時期から、行動力が極端に落ち込む時期もあります。多くの場合、気分の落ち込みと行動力の落ち込みは同時期に起こります。

でももしその周期がずれる場合、大きな問題を起こすことがあります。精神的に落ち込む一方で、行動力が高まっている場合には、その行動が自殺に陥る危険性をはらむからです。

ある程度本人の自覚があるので、専門家による管理やケアが大切です。また周囲の友人による相談が役立つことがあります。

精神的に落ち込んでいる場合の対応策は、個人それぞれに持っていることでしょう。音楽を聴いたり、映画を見たり、あるいは好きなスポーツをしたりなど、気分転換を図る方法はいろいろあるでしょう。

友人を誘って飲みに行ったり、あるいは夜を徹して話し込んだり、と慰め合えるような仲間がいると、ありがたいものです。そのような人間関係は大切にしたいものです。

将来医師として、精神面に課題のある患者さんを相手にすることもよくあります。医師としてそれなりのマニュアルはあります。

でも相手は多種多様な社会生活を過ごし、その中で不適応になっていることも多いでしょう。その点でいろいろな社会状況や家庭状況を、理解してあげられるような医師であってほしいものです。

この教養課程の間に、種々の経験を積み、読書もして、精神的に落ち込んでいる人々の立場や気持ちを、少しでもよく理解できるようになれば、ありがたいのではないかと考えます。

この章では、医学部入学後の教養課程について、説明しました。医学部に限らず、大学のどの学部でも入学後に習得する課程です。専門課程に進む前に、社会人としての素養を学ぶ大切な課程であることを強調しました。

もちろん医師となる上でも、ここで学習する内容の大切さを理解してほしいものです。これからいよいよ医学の専門課程に進むことになります。