星に話をするおばあさん
山のてっぺんです。空に手がとどきそうな、そんな場所に、おばあさんの小さな家があります。外には、古いゆりいすが一つ、ぽつんとおいてあります。
「さて、今夜も始めようかね」
ちょうど、一番星が、出てきました。おばあさんは、ゆりいすにすわり、二、三回ゆらしてから、話を始めました。
「お花畑には、赤や白や黄色のチューリップがさいています」
おばあさんは、空に向かって、話をしています。話を聞いているのは、星たちでした。
星たちは、おばあさんの話が大すきでした。それは、星たちが、見たことがない昼間の話でした。昼間は、月や星の代わりに「太陽」が出ていること、ものには色があること、どれもこれも、知らないことばかりです。
星たちは、おばあさんの話を聞いて、その様子を想像(そうぞう)すると、ワクワクするのでした。
今から、六十年も前のこと。そのころのおばあさんは、まだ、お姉(ねえ)さんでした。
お姉さんのおばあさんは、その日も、山へ登ってきて、空を見あげていました。昔から、星を見るのが大すきだったのです。
「あれ?」
そこに光っているはずの、小さな星が見えません。お姉さんは、心配になって、いても立ってもいられません。
「星く~ん、どうしたの~? 何かあったの~?」つい、空に向かって、大きな声で話しかけました。
すると、小さな星が、とつぜん、光りはじめました。
「お姉さんの声を聞いたら、目がさめたよ」