そう言って笑顔を見せたのだが、疲れた表情は隠せない。

「あれえ、パパぁ、おかおがあおいよう」

「あら本当、あなた顔色が悪いわよ」

「うん、大分飲んだからな」

「それに、また待合室で‥‥主任さんが今朝言ってましたよ」

彰子はさも困ったものだと言わんばかりに眉を顰めた。絵里子はそんな二人を交互に見較べている。

「そうか、里見君か、目が覚めたら毛布がかかっていた」

何だかドライブに出る気分ではなかったが、家に居るのもまた気が滅入りそうだった。

「気分が悪いんでしたら、今日は無理をしないでやめたら?」

「ええっ、やだあ、だってえ」

二人を不安気な目で見ながら、絵里子は口をへの字に曲げた。

「心配しなくいいよ、約束だもんな」

彼は娘の頭を撫でた。彰子は余り賛成でもなさそうだったが、本人が行くというのであるから、あえて反対はしなかった。

「今日は伊藤君がいてくれるし、一日のんびりしてこよう。絵里ちゃん、海岸に降りたらね、きっと蟹さんが見つかるよ」

「ええっ、カニさんがいるのぉ?」

絵里子が頓狂な声を上げ、釣られて彰子も口を窄めた。