第1部 後鳥羽院.順徳院への追慕
第一章 やまとの国の自然の姿や様々な風物
第1節 雪は降りつつ
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【訳】春も過ぎて夏が来たようだ
天(あま)の香久山(かぐやま)は天女が白妙(しろたえ)の衣を干したように白く花霞んでいる
【歌人略歴】
持統天皇(じとうてんのう) 645-703年。飛鳥時代、第41代天皇。天智天皇(第38代天皇)の娘。天武天皇(第40代天皇)の皇后。天武天皇崩御ののち、第41 代天皇として実際に治世を遂行した。
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【訳】秋の田の稲刈り小屋(いお庵)の わらぶき(苫とま)の天井は隙間だらけで私の衣の袖は露にしっとりと濡れている
【歌人略歴】
天智天皇(てんじてんのう) 626-672年。飛鳥時代、第38代天皇。一般には中大兄皇子として知られる。舒明天皇の第2皇子。母は皇極天皇。大化の改新の中心人物として様々な改革を行なった。
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【訳】田子(たご)の浦(うら)に出て眺めてみると
富士の高嶺には白妙の衣のように雪が降り掛かっている
【歌人略歴】
山部赤人(やまべのあかひと) 生年不詳 -736年?。奈良時代の歌人。『続日本紀』などの史書に名前が見えないことから、下級官人であったと推測されている。行幸などに随行した際の天皇讃歌が多いことから、聖武天皇時代の宮廷歌人だったと思われる。同時代の歌人には山上憶良や大伴旅人がいる。柿本人麿とともに歌聖と呼ばれ称えられている。『万葉集』には長歌13首・短歌37首が、『拾遺和歌集』以下の勅撰和歌集に49首が入集している。三十六歌仙の一人。