〈本来の素直な日本語案〉

これにより、我々(日米両政府)はお互いに右記の了解に達した。但し、この右記了解は当然のことながら米国政府の修正並びに日本政府の公式且つ最終決定を条件とする。

(*筆者注)英文案に記載された条件自体が不公平且つ不自然で訳しても意味がないが、文意は右記。

第二点

〈英文案 第六点〉

On the pledged basis of guarantee that Japanese activities in the Southwestern Pacific area shall be carried on by peaceful means, without resorting to arms, American cooperation and support shall be given…

〈送信された日本語案〉

日本の南西太平洋方面に於ける発展は武力に訴ふることなく平和的手段に依るものなることの保障せられたるに鑑み、日本の欲する同方面に於ける資源、例へば…(中略)…に、米国は協力と支援を行う。

(*筆者注)『日本外交文書 日米交渉一九四一年 上巻』(外務省外交史料館)に拠る。

●これは明らかに勇み足。まるで日本が「既に平和的手段によることを保障した」とでも受け取れる、危険かつ意図的な誘導表現になっている。英文はあくまでも仮定または前提条件の話であって過去形ではない。

〈本来の素直な日本語案〉

日本の南西太平洋方面に於ける活動は武力に訴えることなく平和的手段によることを保障してくれれば、日本の欲する同方面に於ける資源、例えば…に米国は協力と支援を行う。

日本側に送付するに当たって、現地側で作成した英文案の中身(用語、ニュアンスなど)を日本側の都合の良い様に日本語に書き換えた案だと見られても仕方がない。

ここには日本の立場を守る姿勢もなく、中身云々よりもひたすら政治的合意を自分の手柄として実現させたいという利己的な功の焦りから、米国側の一方的な傲慢を唯々諾々(いいだくだく)と受け入れた低俗なペテン師の態度だけが見て取れる。

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