『無知だった領域』
意を決した後、それを天に掲げ、「来い!」と短く静かに声を張った。
すると一層の輝きが体を包み込み、
「……お、おお。 き、きた! 」
あの姿に……、なれた。
全身をくまなく確認したが、ちゃんと全身オレンジ色を基調としているあの時の姿だ。
「っしゃあ! 行くぞっ!!」
自ら鼓舞するように両腕の拳を握りしめ自分に気合を入れる。
衝動が抑えきれない。つい先程存在を頼りにしていた院さんの事も待てず、いきなり目先数十メートルの憑依生命体に飛びかかる。
「おーっらああ!!」
機動力は多分こっちの方が上だ。
素早く奴の両腕を掴んでそのまま体を一回転するようホバリングして体の自由を無くし、そのまま無様に地面に打ち付ける。
ガアァン!! と、コンクリートに背面を叩きつけられた憑依生命体はまともにその衝撃を食らった。
「(よ、よし! やった!! 奇襲成功!!)」
先手を取った余韻に浸りたいがスピードで翻弄するスタイルなので、今は手を止めるわけにはいかない。さらに追撃しようと手数を出そうとするが、奴は外見だけ言えばこの前の憑依生命体と似ており大剣のような大きな剣を所持し跪いた格好こそ不恰好であったが、それを振り回して周囲に嵐でも起こす勢いで俺を寄せ付けようとしなかった。
しかし、それでたじろぐ事はなく、前回の憑依生命体戦のように一太刀の動きを読んで懐に潜り込もうとする。
が、あえなく失敗に終わり、無様にも直撃を食らってしまう。
それを遅れて両腕で防御するも、上からねじ伏せるように押さえつけられ逆に跪かせられる。
だがその瞬間、上部に「ガン! ガン!」という鈍い音がこだます。
体勢に不自由があったが顔を上げると、そこにはなんと院さんが二段蹴りをかましていた。
そしてその跳び蹴りのおかげでコンクリートに押し潰されそうになっていた俺の身が一瞬自由になる。
「よ、レッカ! 大丈夫か!」
「院さん!? 足と、手が……!?」