『無知だった領域』
憑依生命体との戦いはこれで2度目なわけだが、今回もうまく戦うことが出来なかった。これでは今後のモチベーションにも関わる。しかも院さんに恥ずかしい姿まで見られて、実に萎える。
「そんなことないぜ。おまえのおかげでいつもより幾分助かった。ありがとな、来てくれて」
院さんはしょげる俺に優しく手を伸ばして握手を要求してきた。状況がよく分からなかったが、俺にはそれが同類の力を所持する証のように見え、その手に包まれるように手を差し出した。
「院さんは、あんなバトルを毎度のようにやってるんすね……」
「んー、そうだな。まあ、そうなるかな」
俺はただの一度でこんな有様なのに、彼はあんな命がけの戦いをいつもやっているのか。その時点で、俺との人間的な能力の格差が感じられる。
「(すげーや、この人)」
俺がそう思った矢先、第三者の声が間近で聞こえる。
「……やっぱり嘘じゃなかったんだ。見せてもらったわ、あんたの姿」
「!? え? 日下部、さん? どう……、え?」
「アイリちゃん!? びっくりしたー!」
急なクラスメイトの登場に、俺はともかく院さんも驚く。
「一応、面識はあると思ったので、私が出てきても問題ないかと自己判断しました」
「そう、か。それなら大丈夫? かな?」
「一応言いますけど、皆すごい首を長くして待ってますよ?」