「あ、マジで? ったく、忙しくない奴らばっかりだな」
そう言いながら、彼は頭をポリポリとかいた。
「み、皆? どういう意味すか?」
「言ったろ? 仲間がいるって、紹介するぜ」
そのまま立ち上がり、心配するようにもう一度手を差し伸べる。俺はその手を「ありがとうごさいます」とか言いながら掴み立ち上がる。
瞬間、ふらつく感覚を覚えたが、頭の回転に支障をきたすことはないだろう。まだ意識もはっきりしないのに「行こっか?」と言う彼に、背中を押され隣の教室に誘導される。
「え? あ、ちょ、……! ま、待って……」
「だーいじょうぶ! 皆良い奴ばっかりだから」
そうして、促すように開かれた扉を前に俺は足を踏み出すしかなく……、
「……!」
そこには広大な教室が広がっていた。
俺の知り得る中学までの経験からしても、これ程までに広い教室は初めてだった。これが大学の教室なのかと感心しながら、何で大学が中学校や小学校に比べてあんなに規模が違うのかが理解出来た。
油断していたら、その初めて見る大きさに「うわ」とか言ってそうだが、今は訳も分からず院さんに背中を押されていたので感動のタイミングを失った。
この大きな教室には疎(まば)らに座る人達が数名いた。
一人は院さんと同い年位に見える、お姉さんのような風格の女性。