『無知だった領域』
「……ごめん、まだ説明してなかったか。オレのを見たろ? おまえとオレのエフェクトの違い。つまり、そのエフェクトをどれだけ全身に展開出来るかってことだ」
「確か、院さんは両足と右肘まででしたよね?」
「詳しく言うと、右足は膝まで、左足は膝下までだけどな。でも、おまえの場合はどうだ?」
「……全身」
「そうだ。その全身に『エフェクト』を纏える奴のことを『完全展開』。オレみたいに特定の部位だけ展開できるやつを『部分展開』って言うんだ。まんまだな」
「ってことは、このキッサって人も全身に展開出来るってことですか?」
「そういうこと。飲み込みが早くて嬉しいぜ。そして、今のところ『完全展開』出来るのは、お前とキッサの二人だけだ」
「マジっすか……」
「しかも、コイツはそのエフェクトの力でSPHを利用し、憑依生命体や『エフェクト』の力を研究するために市民を巻き込んで人体実験を始めた」
「え? は? だってそんなこと……、聞いたことが無いし、そもそもそんなことが出来るはずがない。……ですよね?」
「それが出来るんだよ。今、この都市の上層部の一部に君臨するSPHなら、秘密裏にすることなんて正直、目じゃねえ。もっと言うと、奴の業績から『あの憑依生命体をも操ってる』っていう噂もあるくらいだ」
「……! じゃあ、市民を守るSPHが逆に市民に害を及ぼしているという事ですか? 何のためにそんなこと!?」
「分からん、あくまで推測だからな。だから、オレ達は最終的にそいつのやることを完全に阻止することを目標としている。キッサを追放すれば裏で行われてる悪行も無くなるだろう。……これでオレ達がおまえをすげー欲しがる理由が分かったか?」