そうして、決まりきったルートを通り、ルナ姉の病室へ。
思い返せば、こんなに夜遅くに出向くのは本当に久しぶりだ。
「ごめん、ルナ姉。遅くなった」
本来なら学校の授業が終わったらすぐに向かっていたので、思わぬ出来事で大幅にタイムロスした。当然、それを予測していなかった彼女も、あらぬ時間の俺の訪問に腹を立てる。
「レッカ君、おっそー。部活でも入ったの?」
「いや、入ってないけど……」
「じゃあ、何してきたの?」
「いや、別に……」
しつこいその言葉に俺は正直に答えることなく目を逸らす。
また自分が憑依生命体と関わるような危ないことをしていては、途端に反対されるのが目に見えている上、昨日の態度で憑依生命体との関連事項を説き伏せようとしてくるのは言うまでもない。
しかし、そんな逡巡(しゅんじゅん)に長年姉弟をやっている彼女に利くはずもなく、俺の綻びある発言にズカズカと聞き返してくる。
「え? 何?」
「何でもないよ」
「何でもない訳ないじゃん。じゃ、何で遅れてきたの?」
……どうしよう。本当は言いたくはない。言ってしまえば、その後の彼女の反応が分かるから。
でも、ここまで迫ってくる彼女を止める術を持ち合わせていない。
覚悟を決め、うまく言い逃れられない自分を悔やみながら呟いた。
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