『無知だった領域』
「レッカ、紹介するぞ。ここにいる皆が『クラシオン』のメンバーの全員だ」
「く、『クラシオン』?」
「あー、チーム名みたいなもんだ。かっこいいだろ? まあ、昔は呼び名が沢山あったんだがな。『対SPH部隊』とか、『対策部』とか『秘密サークル』とか……」
「はあ……」
何の話だ? 何て言うか、秘密結社みたいなノリなのか?
……と考えているうちに、皆の紹介が始まる。
「じゃ、一人ずつ紹介してくぞ。こっちにいる優しそうなお姉さんはユウナ。ここの大学に通ってる二回生だ」
「レッカ君、よろしくね。あたしのことはユウナって呼んでいいからね」
「えっと、よろしくです、ユウナさん」
院さんが手を伸ばす先には紹介された通り、本当に優しそうで何となくほわほわした雰囲気の女性がいた。
ミディアムパーマにスタイリングした髪を揺らしながら、白地のブラウスに、ロングスカートを穿いた点はいかにもお洒落な大学生といったところだ。
優しそうな点で言うとルナ姉に似ているが、ルナ姉とはまた違った「大人っぽさを醸し出すお姉さん」と言ったところだ。
「で、こっちの剥げてもいないのに日中この白いニット帽を被ってるのがセクタだ。こっちも大学二回生。ちなみにこの二人はオレとタメだ」
「……よろしく」
「宜しくお願いします」
次に向けられたのは、目元まで被った白いニット帽が印象的な長身な青年だった。
部屋の隅に佇みながら片手を挙げ挨拶の様な恰好をし、小馬鹿に紹介されたのにも関わらず特に目立ったアクションは無かった。
無口な青年なのか、そのせいで親密な関係は築けなさそうな気がしたが、そんな素振りをあからさまに見せてはセクタさんに申し訳ない。
「で、こっちの洒落た改造制服着てる女子高生がアゲハ」
「よろしくな、レッカ!」
「よろしくです」
次は男気あふれる声と気前のいい笑顔で「レッカ」と呼ぶ女子高生だった。
あからさまに分かるつけまつげに、後頭部でまとめたポニーテールが特徴的。前髪をピンで留めるなど、おしゃれにはこだわっていそうな様子だ。
ルナ姉と同じセーラー服を着ているが、それには改造が施されており、着用している服が同じであるにも関わらず、風格がルナ姉のそれと全く異なっているところも、不良少女のようだ。
「で、こっちの冴えなそうな男子高校生はベニマル。いっつも自前のパソコンで弾幕ゲームをやってる。ちなみに、ベニマルって言うのはニックネームじゃなくて苗字だ。珍しいだろ?」
「どうも」
「どうも、です」