『無知だった領域』
しかし、そんな俺の反応に一早くアゲハさんが声をあげる。
「えー、なにそれ。じゃあ、おまえは『力』持ってるってのに何もしないってこと!?」
「ええ!? ……あ、じゃあ、入ります。ごめんなさい」
「いやいやいや……、そんな『脅されて入りました』みたいな感じにならなくても、別に話があるなら聞くぜ?」
とりあえず弁明の余地はありそうだ。何でもいいので、口を動かす。
「……あ、えっと、俺、実は部活とかにも加わったことなくて、集団で行動することに慣れてないっていうか……。それに……、多分皆は俺のこと、特別すごいとか思ってるかもしれませんが、全然そうじゃなくて、今は何か特別な力を持ってるとかで、すごい期待とかしてるかもしれませんが、俺ホントはすごい臆病で不器用で、人並みに出来ることさえ全力でやってやっと出来る程なんです。だから、その、ホント、俺クズなんで、皆さんの役に立てるか……、もしかしたら邪魔してしまうかもしれないんです」
たどたどしくではあるが、今抱える不安を俯きながら語る。しばらく数秒の沈黙が流れ、俺は大量に冷や汗をかきながら「何てことをしてしまったんだ」と後悔の渦にのまれたが、それを院さんが吹き飛ばしてくれた。
「なるほど。言いたいことは分かった。ただ、それだけなら全然大丈夫だぜ。なんたって、ここ(クラシオン)に入るからっつって、そんな難しいことするわけじゃないからな」
「え? そうなんですか? ……えと、ちなみに活動的に何をやってるんですか、ここ?」
「普段は各々の放課後にここに集まってダベッてるって感じだな。基本、自由だ」
「それだけですか⁉」
「勿論、憑依生命体が現れたら活動するぞ。主に憑依生命体とSPHの様子見。オレは憑依生命体との戦闘。セクタ、ユウナ、アゲハはSPH内に潜入。ベニマルと平松さんは内部からコンピューターで連絡。アイリちゃんは……」
その回答は日下部さん本人が答えた。
「学校の宿題」
「え、時々オペレーターみたいなことしてるじゃん……?」
「宿題です」
「……そうだな、宿題だな」
「え?」 と俺。
「だから、もしおまえが入ったら役割的には、オレと同じ『憑依生命体との戦闘』になる」