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「Congratulations ! Mr.Sakakibara」
一連の儀式を終え、耳の奥への簡単なオペを済ませると、副所長のウォーレンは「タツ」に握手を求めてきた。
「君の耳に埋め込んだ超小型イヤホンは、最新テクノロジーの粋を集めて作られたものだ。これで君は正式に我が研究所のメンバーだ」
そして「タツ」の身体を引き寄せると耳元でささやいた。
「よろしく頼むよ」
「Thank you so much! boss」
タツが旧文部省に入省した一九八七年は、
この惑星にとって、太陽系にとって特別な年だった。
ハーモニック・コンバージェンス。
惑星同列。太陽の周囲を公転する惑星が一直線に並ぶ現象だ。
それがなにを意味するかはわからない。
どんな現象が起こるのかもわからない。
ただその現象を知る人々は、各々の信ずる神の下に集いこの星の平和と安寧を祈った。
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物事には必ず「表」と「裏」がある。
それは、国家や組織にも当てはまる。
王立歴史問題研究所もまた例外ではない。表向きは、戦争回避のためのシンクタンク。
しかしその裏側は……。不都合な歴史の書き換え、あるいは抹殺。
目的達成のためには手段を選ばず。
それが彼らの流儀なのだ。