僕の部屋は「自由への道」か、そうなれるだろうか……?

その言葉が心に突き刺さり、そこから動くことができなかった。疲れのために少し感傷的になっているのだ。僕は気を取り直すと、ゆっくりドアを開けた。

部屋は八畳ぐらいの広さで、ベッドと木の椅子以外、調度品と呼ばれるものは何もなく、ベッドの上に敷かれたマットレスには、枕と畳まれた毛布が一枚置かれているだけだった。

夜行バスでの明け方の寒さを考えると、コンクリート造りのこの部屋で、毛布一枚ではとても夜は過ごせないだろう。僕は当面、日本から持ってきた寝袋を使うことにした。ただ慰めは、庭に面した窓から、青く澄んだガンジス川が目の前に見えたことだ。

リシケシの宿の相場は分からないが、一ヶ月の宿代三十ルピーは、イギリス風の庭と、ここからの景色の良さを考えると決して高くはないだろう。バスターミナルにあるチャイ屋の値段や宿代から、よほどの贅沢をしなければ、一ヶ月一万円で十分生活できると思われた。

「長い一日だった」

担いでいたバックパックを部屋の隅に置くと、服を着たままベッドの上で仰向けになり呟いた。旅は始まったばかりだが、心の底に疲労感とは別に何か重いものが沈殿していた。

それはきっと、何かに対して常に身構えている自分自身が作り出したものだろう。

天井にへばり付いてじっと動かないヤモリを見ていたら、すぐに深い眠りに落ちていった。