いよいよクラス替えを控え、文集を作ることになった時のことだ。クラス全員に与えられたテーマは「あのね、先生」。

先生との思い出を書くようにとの指示だったが、僕はこれをチャンスと捉え、「なぜ同じことをしても僕だけ怒られるのか」「なぜ誰かがやった悪さを根拠もなく、お前がやっただろうと決めつけるのか……」つまり、逆えこひいきの実態を暴露したのだ。しかし先生からは何の注文も付けられなかった。

そのまま事は進み、いよいよ文集は完成し、生徒たちに配られた。目を通すと、そこには僕が書いた作文は削除されていた。

3年生になって担当してくれた先生は女性だった。着任早々、帰り際に彼女に呼び止められ話しかけられた。

「私はね、あなたの良いところ、たくさん知っているのよ。だから、会うことを楽しみにしていた」と。

きっと彼女は僕の噂を聞いて、作戦を考えてきたのだろう。例えば国語の授業で、僕が当てられて答えると、「とても良い視点。この考えは木の幹のようなものね。木の幹がしっかりしていると、その後枝葉が育つ。ありがとう」、などと折に触れてほめてくれた。

すると単純な僕はあっさり大人しくなった。そして5年生からが遠藤先生だ。正直厳しい遠藤先生を見るとつい1、2年生の時の担任の先生を思い出してしまう。少しずつ悪い振る舞いがまた出始めて、先生に怒られ始めていた頃のことだった。


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