「顔も心もブスになるんだよ」と言い切った母は、テク坊と達也、正男の顔を見回して、「三人ともカッコいい顔しているのに残念だよね……」とため息をつきました。

達也は真っ先に「俺、や~めた! テク、やめようぜ」と言い出しました。正男も「俺もやーめた」と言い、店の中に入り、お菓子を選び始めました。

「テクさ~、女いじめたって笑えねーよ。おばさんの言う通りだよ」

達也や正男にそう言われるとブスッとしたテク坊が店に入って来て、あんこ玉を買って、そのまま口に運びました。

母は「テク、正男くん、達也くん……みんな偉いぞ~」と言いながら、三人の頭を撫でておりました。正男が「おばさん、頭撫で過ぎだよ……痛いよ!」と言いながらも笑っていました。

いじめはしない、なんて当たり前なことなのに(偉い? どこが……?)と疑問で頭がいっぱいになりましたが、母のお世辞に気をよくした三人は仲よく帰っていきました。

「お母さん。あんな悪ガキがどうして偉いわけ? 信じられないわ!」三人の姿が見えなくなってすぐに、私は母に噛みつきました。

「どんなことでも、男が一度決めたことを断念するんだから、理由はどうであれ偉いのよ」

「だって、いじめだよ」

「テク坊はいま、小学四年生でしょ。大きく見せたい年頃なのよ~」

「へーっ、さすが、みかどのおばさん。でも、お母さんは男の子に甘いだけじゃないの?」

なおも食い下がる私に向かって……、「ヨーコ、テク坊が五年生になったら、どうなっているか――。見てのお楽しみだよ」と、母は苦笑していました。

「へぇ! お母さんの腕、見せていただきましょ」

あのテク坊が五年生になってもたいして変わらないだろう、と私は高をくくっておりました。

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