「おばさ~ん、お菓子ちょうだい。俺、これと、これね。早くしてよ、おばさん」と母を焦らせ困らせていました。そんないたずらっ子の彼を、母は店からすぐに帰さないのです。

「テク坊、今日は学校、どうだった?」ってな具合に世間話をするのです。

テク坊も素直に、「担任の先生がああで、こうで――」「体育の授業中におならをした子がいた」とかどうでもいい話をします。テク坊は明るくておばあちゃん子なのに乱暴な口をきくのですが、そんな彼の話を、母はとても楽しそうに聞いていました。

みかどの前で母と立ち話だけをしていく日もありました。

ある日、みかどの前で世間話をしたあと、テク坊は「森田をいじめに行こうぜ!」と達也に声をかけました。

森田さんは、テク坊たちの同級生の女の子です。私はギョッとしましたが、母曰く「テクはお年頃で強がっているだけ」とのことでした。

そんなとき、母は必ず「コラッ! 待て、テク~」と言いながら、テク坊を抱きしめて行かせないのです。

「なんだよ。おばさん、離せよ~」と悪態をつくテク坊に、母は我慢強く言い聞かせます。

「テク、アンタは男前なのに、どうして森田さんをいじめるの?」私は(テク坊が男前?)と心の中でざわつきましたが――。

テク坊は「男前」という言葉にやたら反応し、身体をくねって母に向き直ると、

「おばさん……いじめたらダメなの?」と甘えた口調で訴えるのです。

「ダメだよ~。男が女の子をいじめると、ブッサイクになるからさ~」

「ブッサイクって……?」