【前回の記事を読む】職質された!? この子はまだ12歳。中学生になったばかりで、悪いことをする子じゃない。「怖かった」と目に涙を溜めるのを見て…

一章 自我が目覚めるお年頃

十三 お巡りさん、子どもを信じてあげてください

「……あっらま~、神尾くんじゃない? 大きくなったから、おばさん、わからなかったわよ~」

神尾くんは膝から崩れ落ちました。

「やっと気づいてくれた! おばさん、気がついてくれないからどうしようかな~と思っちゃったよ。おばさんは変わらないね~」

そして、店内を見回し、「今日は、あのおとなしいおじさんはいないの?」と聞いてきました。

「いま仕入れをしに錦糸町に行っているわ」

「そっか~、久しぶりにおじさんにも会いたかったな」

二人の友人に「俺、ガキの頃、みかどのお菓子で大きくなったって言えるぐらい、毎日ここに通っていたんだよ」と話す神尾くんは、すっかり大人の雰囲気をし出しておりました。

「あのちびっこだった神尾くんなの? 本当に立派になっちゃって……」と母が涙ぐむほどでした。

私は(お巡りさんに職質され、泣きながらみかどに駆け込んでくる誠くんも、数年後には神尾くんのようになっていくんだろうな~)と思いました。

ふっと誠くんと目が合うと、すっかり落ち着いており、「ファイト……!」という私の言葉に、誠くんも大きく頷きました。「私がお巡りさんをビビらせに行かなくても大丈夫みたいだね」と言うと誠くんはハイタッチをしてきました。

「ありがとうございました!」と神尾くんたちに頭を下げて、しっかりとした足取りで店から出て行きました。

成長した子どもが年下の子どものよき手本になり、誠くんも大人になるための仲間入りをするのです。みかどはそんな貴重な場でもありました。