将来、子どもができて、散らかっている部屋に住んでいる自分を想像してみた。横には、もちろん健一がいる。美紀はしばらく自分の世界に入り込んで空想を楽しんだ。
「ねえ、ねえ、今度は百円ショップの有効な使い方ですって」
上田さんの声に美紀ははっと現実に戻った。
「ホームセンターなら分かるけれど、どういうことかしらね」と返しながら、ずっと聞いていたように取り繕った。
「家の中の雰囲気を変えるのは、ちょっとしたコーナーを作ったり、シールやおしゃれなマスキングテープを張ったりすることも素敵ですよ。私はいろんなシールを使って楽しんでいます。たとえば、これ一枚で百円なんですよ」
講師は一メートルくらいあるシールを見せ、「これは子ども部屋の壁に貼ると楽しいわね。それから、あれはトイレ。リビングにはそれが良いかしら。皆さんびっくりされているようですが、すぐはがせるので跡も残りませんし、しばらく貼って飽きたら別のところに貼ることもできます。
また、造花も捨てたものではありません。最近では、結構上手に作られたものがありますので、これらを使って試していただくのも楽しいと思います」
そのあと、リフォームに関する質疑応答があり、ティータイムとなった。結構、ホームセンターを使っている人がいたり、これから百円ショップに行って探検してくるという人もたくさんいた。
美紀も仕事の帰りに寄ってみようかと思っていた。機能的だが、遊びがなくそっけない室内を少し暖かくしてみようと考えたのだ。
ティータイムが終わり、自宅に帰った美紀は、健一のところに行くためのリストを作り、荷物の準備を始めた。これから時々行くとすると、あちらに置く方が良いものもいくつかある。
あれこれ考えているうちに外はすっかり暗くなり、もう夕食の時間。ありあわせのものでさっさと済ませて、再び準備に取り掛かる。旅行用のスーツケースに荷物を入れて、ほぼ完了。明日の日曜日、健一が車で迎えに来てくれる予定である。スーツケースであれば、雨でも大丈夫。
ほっと一息つき、今日はゆっくり休むことにした。
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