第1部 政子狂乱録
三 亀の前の厄難
上下を入れ替え、畏れ多くも亀の前が政子を組み敷き、両足を肩にかけて初めからやり直した。そしてもう数回抜いたり入れたりするうちに「お亀、とってもいい気持ち、もう堪らないわ」と叫び、政子もまるで大病人の死際の様だ。
しばらく抱き合ったまま、お互いの指で鐘音騒水(しょうおんそうすい)(淫汁)を掬い取り、愛液で滑った相方のその指を口でぬぐってやる。
「鐘音騒水」とは張形を抜き差しする際の、ピチャピチャという淫水の音のことだ。下にいる政子は伸長位の姿勢をとり両股を閉じて脚を伸ばし、上の亀の前は胸を反らして床に両手をつき腕立て伏せの姿勢で体を支え三百回ほど腰を使って九浅一深(きゅうせんいっしん)の運動を行う。
その内に下腹(したばら)が締って興奮が高まってきたので、今度は腰で丸く輪をかくようにして百回ほど擦り合う、そして張形の先を花芯に当てて、双方が腰を百回ほど大き目に回転させると、花芯が更に固く尖ってきて、左右の花弁が波のように浮遊して扉を閉じてしまうので、二人共、歯を食いしばって、息を止めて、ここぞとばかりに最後のラストスパートで強烈なピストン運動を五十回ほど繰り返すと、双方の花芯が一息に開いて精水がドーッと出てきた。
これをすると心臓も肝臓も震えあがり、五体はしびれ、口には手拭(てぬぐ)いを固くかみしめていても、ああ、はあ、と六回も七回も息をすると、「夢情留心(むじょうりゅうしん)」(自製の張型で簪(かんざし)や帯留(おびどめ)に紅布を太さ一寸(約3㎝)程になるように巻いたもの)が、双方の花芯を強くたたきあう度に、お互い息を切らして失神したり、また気が戻ったりと益体(やくたい)もないことになる。これが札法の極意というものである。
行為の最中に双方が口吸いをして唾の交換をしあえば失神する心配はなく、これが浄妙飲(じょうみょういん)の法にかなうという。