智脳教

第一章 あるとき妖精を見つけた

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無言のまま啓介は父さんの同僚と一緒に泡島5丁目というところまで車で来た。啓介にとって部屋を出たこと自体30年ぶりであり、父さんにとって自分の息子をさらしたのは啓介が小学生以来である。

工場倉庫が集まる中、宗教施設というより企業のような見た目の倉庫だった。

俊紀は同僚の天城伸行に、「智脳教とはそもそもどんな団体なんだ?」と聞いた。

天城伸行という20代の男は、「教祖は昔は大脳生理学の医者です。何を思ったのか医者を辞め宗教団体を立ち上げました。主なメンバーは元大脳生理学教授の三崎学、元心理学教授の桐鈴子、ロボット機械工学大手企業オーナーの枝木都司、考古学教授の滓亮太……なにやら頭がよすぎるとおかしな方向に暴走でもするんですかね?」と言う。

俊紀「心理学を悪用して何かしでかすというのはわかる。しかしそこに何故考古学なんだ?」

「まあ、あとは実際に見て確かめるとしよう。その施設とやらを」

小田義則は長老とも呼ばれるまとめ役だ。

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武器からマッサージ機器まで手がける大手機械メーカー『ガネーシャ』。それを支援している宗教団体が智脳教なのだ。ガネーシャには智脳教信者が働いているという噂は本当だったか?

小田義則「どうやって調べるか……だがどうするんだ? 技術班」

「虫型ドローンを施設内部に飛ばしましょう」

佐伯英二は試験管に入ったドローンを飛ばし自身のノートパソコンで様子を見ている。ハエのようなドローン。精密機械だから試験管にでも入れておく必要があるのだろう。

もともと極秘任務で使うことの多いハエ型ドローンは施設内に入っていく。誰かの出入りを狙い内部奥深くに。事務処理室会議室を越えると倉庫があるはずだ。