惑星キチェケ

地底都市フンハウ

1

ワルテル・アパソロは、子供の頃の夢を見た。死んだ母は何故か若い姿で「あなたはインカ皇帝の血を引いているの。だから誇り高く生きるのよ」と言っていた。

ワルテルとはペルーに多い伝統的な名前だが、アパソロはスペインに多い名前だ。

ワルテルは先祖を調べてみた。

古い血筋なのでよくわからないのだが、インカを征服したペルー人兵士に犯された巫女がいたらしい。その巫女の血族の遠い親戚ではあった。

ワルテルは42歳の男でインカ文明の考古学の教授であった。

子供の時はムー大陸やらアトランティスやら怪しい知識ばかりを追いかけていたものだが年を取るごとに熱は冷めていって考古学への情熱と変わった。

父さんは……金と酒とヤクでどこかへ消えていったもはや他人だ。

ペルーの侵略時に多く建てられたマンションで母さんの写真に行ってくると挨拶するとドアを閉めた。

2

太陽のピラミッドは高さ65m底辺222m✕225mの遺跡だ。実はこの内部はよくわかっていない。素粒子で内部を観測したことでわかったことは3段階を通して建築されたということだ。つまり、この太陽のピラミッドの下に2つのピラミッドが土台としてあることになる。この下にあるピラミッドを観測することで当時の技術を調べることが計画であった。

素粒子物理学のクステリアは24歳の未婚だが大学は9歳で飛び級卒業した才女である。マサチューセッツ工科大学で素粒子物理学を学んでそれを考古学に生かそうと思ったらしい。眼鏡がないと何も見えないが気が強い。ワルテルは南米出身ながらケンブリッジ大学に進み南米専門に考古学研究をしている。

……いつか、南米自身が考古学の大学を作れるような成長を望んでいる。ワルテルとクステリアは遺跡現地の研究仲間だ。

太陽のピラミッドの下は自然洞窟へ繋がる人工トンネルでできている。しかし、墓荒らしが多く見込みある功績には至っていない。クステリアは「遅刻よ。研究をなんだと思っているの?」と言ってくる。

珍しい。素粒子の観測でもいままで何もできずにいたのに……。

ワルテル「なんだ? 隠し部屋でも見つけたか?」

クステリア「ええ、一番古いピラミッドよ。入り組んでいるけど自然洞窟に繋がっているわ」

ワルテル「それは凄いな」

クステリア「あとは発表ね」