【前回の記事を読む】「僕は何者? 本当に母さんの子供なの?」「…あなたは、ウイルスを故意に感染させて、免疫を持った唯一の成功サンプルよ」

アルゴス

第三章 過去

4

受精卵は普通の受精卵の反応のように増殖を続ける。

失敗作のように奇形の因子が見られない。結果はまだわからないがいける気がする。

よしっ。

健志郎はガッツポーズをして茜は何故か後悔しているような様子を見せた。

その時だ。揺れた。地震だ。大きい。

機材が崩れ落ちる。

しかし、トーレは容器に入って漏れる様子はない。

闇とはいえウイルス研究なのだ。

しかし、大きい。東北地震はマグニチュード9を示した。

健志郎が叫ぶように言う。「おい、受精卵を持って逃げる準備をしろ」

茜「え? 逃げる? 何処に?」

健志郎「この強さの地震だ。津波が来る。急いで屋上に逃げるぞ」

5

受精卵の試験管サンプルを持ち防護服を着たまま屋上に走る。

一応、除染洗浄はやった。

それでも巨大な津波はビルを破壊でもするかのように勢いよく海水をぶつけ機材ごと外に放りだす。二重にしている窓やドアなど意味が無い。

人が見える。簡単に流されていく。助けようがない。

車の屋根に上り助けを求める親子。しかし、容赦なく沈んでいく車。

夜になっても助けを求める声は止まなかった。

深夜にもなれば声は止み沈黙が流れた。

2人は割れた窓ガラスに注意し身体を寄せ合って眠った。