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液体窒素は十分ある。魔法瓶の原理の容器に実験段階の受精卵の試験管を入れると救助が来るより自らその施設に向かうことにした。

海水はまだ泥と一緒に漂っている。

漁船の船で救助している人を見つけ大声で救助を要請する。

収まりきらない人数を乗せて漁船は海を漂いなんとか高台にある小学校に避難できた。

支援物資は届いていた。しかし、だいぶ混乱がある様子だった。

毛布などかなり余っているが食料品は足りていないらしい。

薬も届いているが一般人に知識が無いため山積みのままだ。

誰もができることをボランティア始めた。

健志郎は薬の分類仕分けをして、茜は現地医療を始めた。

怪我をしている人も多かったが薬が無ければ破傷風になってしまう。

現地の人の信頼も得始め一定の評価を得た。

仲良くなったのは温泉経営者も含め複数に及んだ。

ラジオが有力な情報手段だ。

〔この地震で死者もしくは行方不明者20万人を超える見通しで……〕

〔原発の冷却システムに異常、非常電源が損傷しているため……〕

〔原子炉建屋が爆発、1号機2号機3号機に続いて4号機までが……今後も原子炉の損傷に予断が許されない状況に……〕

「おい、逃げるぞ。放射能がこっちに来る」

住民が騒ぎ始めた。

逃げまどう人々。しかし、風向きがこっちを向いているとはわからなかった。

原発推進派はこの後に及んで政府に協力せずスピーディな情報を提供しなかった。

その時みな放射能の風をまともに浴びたのだ。

避難している中には子連れも多かった。

皆で協力して困難に立ち向かっていた経験から仲間意識が芽生えていた。

連絡先を互いに聞いて別れた。

せっかく成功したと思われる受精卵を取られたくはなかった。

健志郎や茜は行方不明ということでスポンサーと手を切り自らの老後の蓄えにするつもりでいた。

健志郎と茜は別れ別々に暮らすことにした。

茜は健志郎に罪の意識を感じていた。