誰でも知る大企業へ(昭和四十三年~平成十年)
ツーリング
函館の駅でホームレスのように寝てみた。人がバタバタ歩くためホコリが立ち上がっていて、顔や体が汚れてびっくりした。
ツーリングは野性的で外気に直接さらすため、暑さ寒さの体温調整を心がけた。何があるか分からない文無し帰郷は、体力と自然との戦いだ。
東京上野駅前でパンクし、途方に暮れた。バイクを売る所は数あっても、パンクを修理する所が無い。探し回っていると修理してくれる店を見つけたが、主人が今留守だという。私がやってみようかと言って奥さんが始めた。
パンクして乗り回したため何ヶ所も穴があるのを修理してくれて、やっとホッとした。嬉しかった。その日は上野駅で寝て、翌日またパンク。昨日、完全に直っていなかったのだ。昨日の店の場所はもう分からない。別の店で再度直して帰ってきた。
南の方へは神奈川県の小田原まで行き、一緒に働いていた友がいて一晩お世話になった。車が渋滞した左側をスリ抜けようと走ったとき、渋滞の列に右折のため停止していた車に気づいたが、間に合わず転倒。バイクのバンパーがちぎれ、アクセルは強打で使用困難に。
相手は中古車販売の業者で、車はアメリカ車と聞いて驚いた。車のバンパーの塗装をはがしてしまった。グラスファイバーの破損が無くてホッとしていた。これでは栃木までは帰れないだろうと言われて、バイク修理屋へ連れていってくれた。ほんとうにありがたいと思った。車の修理代四万円余に親切代を入れて送った。
目標を持たないことは行動に無理がない。ここまでやらなければという抑圧もなく無駄な疲れもない。無理をすればそのシワ寄せが出てくる。常に余力を持つことが賢明だと、ツーリングで教えられた。
落葉舞う森を育てた自負に舞う
別荘地に勉強部屋
別荘を持ったと聞くと、お金持ちが優雅に過ごすと思いがち。ところが貧乏人でも別荘らしきものが、情熱と心がけで持てたのである。栃木県北部那須の、御用邸など別荘の多い所だ。
私は原付バイクで当てもなく、別荘を見るのが好きで夢とロマンに耽っていた。ゴルフ場のような整備された所は手も足も出ない。貧乏人であるから、それに似合ったものであることは当然である。