これはサイバーナイフ治療中、病院からもう治療が終わったと、彼が私に知らせてきたラインだ。終わりだと2回書いてある。このラインを最後に彼はもうスマホで文字を打つ事ができなくなった。

スマホを持つ様になってから、私達はラインで連絡を取り合う事が多かった。「今駅に着いたよ」「雨が降ってきたから迎えに来て」何気ない日常のやり取りが、どんなに幸せだったか、今なら分かる。

今でもこの彼からのラインの文字を消す事ができないでいる。スマホから削除するのは、何か寂しくなってしまう様に感じたからだ。

「再発部分も消え、浮腫も消えたのだから良かったね」と言っても、彼にはその実感が無かったのだ。それどころかその頃には、彼なりに【死】というものを意識していた様に思う。

「再発部分も消え、浮腫も消えたのに何故もう終わりですなど言うの?」と私が聞いた事を覚えている。それに対しては何も答えなかったが、彼自身何かしらきっと体調に変化を感じていたのだろうかと、今となっては思う。

十二月初めには子供達と、私達夫婦の結婚四十周年をやる事もできた。今まで色々な事があったけれど、もう四十周年かと思うと、本当に感慨深いものがあった。

又彼とこうしていつまでいられるのだろうかと思うと、胸が締め付けられる思いで、ぐっとこみ上げるものを感じてならなかった。又この時は、これで何とか今年のお正月は、越せそうかなと思っていたのだった。

お正月過ぎてから、子供達と地方の実家にも何とか行く事もでき、神社にお参りにも行く事ができた。しかしもうこの頃の彼は、家に戻ると、ごろごろと寝ている状態ではあった。