第1章 渚にて
これを受け取ったとき、私はどうしようかと悩み、デービットに相談した。
「私たち銀行に預金もあるし。100ドル紙幣10枚って必要かしら? このお金はこの優しいお母さんに返すべきだわ」
私はその母親に電話し、送り返すと申し出たが、断られた。夫は長距離ドライブではトイレが近くなるため、少なくともポータブル便器は頂いておこうと思っていた。私って実務的!
その携帯電話にカードを差し込み起動させ、フランクに電話した。早朝でも彼がフレデリックの研究室に出勤してることは分かっていた。フランクは2013年に退職させられる前まで国立ガン研究所に39年も勤務していた。
私は手短に起こったことを説明し、アドバイスを求めた。
「バカだなあ」と彼は言った。「ボートがあるだろう。君が住んでいるのは海上なんだ。奴らは水上を脱出する人を捕まえることはできないよ。家から逃げ出すのは可能だよ」なかなかのアイデアだったので、すぐさま私は実行することにした。
義理の娘エリザベスは当時うちのセカンドベッドルームで暮らしていた。年齢はというと、算定する日によるが私より6歳 、または7歳下で、体つきも髪の色も私と同じようなかんじだった。
ちょうどその日が彼女の誕生日で、私たちは彼女をランチに連れて行く予定だった。デービットは彼女を起こしに部屋まで行き、下に降りてくるよう伝えた。
私はデービットとエリザベスに計画を説明した。
「あなたたち2人は外へ出て、近所を散歩するの。どんな様子か確かめるのよ」
「僕散歩になんか行きたくないよ」とデービットは文句を言った。
「あたしも行きたくないわ」とエリザベスも同調した。
「大丈夫だからね。彼らは何かの口実で私を逮捕しようとしてるの。どんな様子か確かめるのよ」
2人は準備して出ていった。少し歩いたところで、3名の男が彼らに近づいた。1人はうちのドアをノックしていた男だった。
「ジュディ・マイコヴィッツ、あなたを訴状に基づき拘束する」と彼は書類を見せながら言った。
「あたしはジュディ・マイコヴィッツじゃないわ」と言ってエリザベスは免許証を取り出して彼らに見せた。