「お食事でございますか。ランチメニューはこちらにございますのでご覧ください」

ウエイターはそういうと下がっていった。

「ねえ、何が良いかしら」

「そうだな、僕はCにするよ。子牛のステーキだ」

「わたしはA。チキンのグリルね」

ちょうどお昼の一番混む時間を外れていたためか、休日にもかかわらず、比較的ゆったりとした昼食を楽しむことができた。食後のコーヒーが運ばれてきた。

「お食事はご満足いただけたでしょうか」

「ええ、とても美味しかったわ」

「ありがとうございます。実は、午後の演奏がもうすぐ始まりますので、お急ぎでございませんでしたらぜひお聞きください」

「あら、生演奏があるなんて知らなかったわ。ぜひ聞かせていただきますわ」

「午後の演奏は休日と祝日のみとなっております。また、夜は毎晩八時から演奏タイムがございますので、次回はぜひ夕食をお楽しみいただければと存じます」        

演奏者は音大の学生だったが、クラシックのみならず、軽快な曲もそつなくこなし、とても楽しいひと時であった。

演奏が済むとレストランを出て、公園を散歩しながら駅に向かった。駅前にはおしゃれな小物を売っている店があり、そこで二人は気に入ったグリーンのランチョンマットを購入した。

「ランチョンマットは安いものだけど、時々替えると気分が変わっていいわね」

「今夜、さっそく使ってみようよ」

「そうね、そうしましょ」

月曜日の朝、健一は出かける前に、美紀のおでこに軽くキスをしてから言った。

「二週間後、迎えに来るからね」

「はい、お待ちしています。いってらっしゃい」

健一が出かけた後、美紀も台所を片付けて出勤。マンション前の花壇には、色とりどりの百日草やゼラニウムなどの花が美しく咲いている。サークルの皆さんが手入れをしているので、いつもきれいになっているのがすがすがしい。