感覚、知覚、認知は、ヒトが環境から情報を仕入れる、階層的な分類である。感覚神経で刺激を受けてから、中枢神経・脳へ信号が伝わる過程で、階層的な処理が行われる。

一方、反応に関しては、不随意(無意識)的か、随意(意図)的か、の分類がある。こちらは、不随意的な効果の積み上げの上に随意的な効果がある、という階層関係ではない。環境へ反応するには、素早く対処するのとゆっくり反応するのを使い分けている。

2 生体の歴史

生体の歴史

技術にも、小さな流れと大きな流れがある。小さな流れとは、一時的な「流行(はやり)廃(すた)り」である。小さな流れに嵌(はま)ると、今見えているパラダイムの中で、細かい技術論に明け暮れてしまうようになる。

本文書では生体機能から道具を見直す。そのため、議論の参考として、生物の歴史的な経緯をしばしば参照する。それによって、ヒトと道具の関係に関し、大きな流れからの視野を確保する。流行りでなく歴史を見てみよう。ここに生物の歴史と時間スケールを示す[クリストファー・ロイド,2012][ユヴァル・ノア・ハラリ,2016]。

図:生体の歴史

まず、37億年の地球の生物の歴史の中で、一桁小さく近い過去、5億年前にようやく眼が誕生した。まず味覚・嗅覚という化学的感覚や、聴覚・皮膚・体性などの物理的感覚があった。そういうところに、視覚という電磁波の遠隔感覚が突然と登場した。生殖や生存競争への影響が大きかったことが想像できる。

【前回の記事を読む】ヒトとコンピュータは会話するようになる!?機械道具からヒトのパートナーへ