どんだけ青天の霹靂やねん
スニーカーを履きかけると、女性捜査官から
「紐靴はダメです」
と言われ、サンダルをつっかけた。
家の前には、黒の大型ワンボックスカーが待機しており、後部座席に、両側を捜査官に挟まれて座った。
正直、何の現実感もなかったが、車は発進した。
家の前に、オカンがポツンと立っていた。
到着したのは、大阪府警察署内の留置場である。
辺りはもう、薄暗くなっていた。
そこでまず、留置場の看守長と思われる人物の面接を受けた。
彼は、僕のプロファイリングを見ながら、
「あなたは、お医者さんですね。こんなことで逮捕されて、今日からいきなり生活が変わってしまい、気の毒に思います。気をしっかり持ってください」
と言われた。
今の職場では、上司や同僚に、そんな気遣い溢れる言葉をかけられたことはないかもしれない……との思いが胸をよぎると、一瞬で夢から現実に引き戻されたような感覚で、涙が溢れ出た。
留置場は塩ビシート貼りのような床で、トイレと蛇口以外は何もない。
何室か並んでいる中のひとつに収監された。
原則的には逮捕時から48時間以内に、釈放となるか、検察送致となるかが決められるというルールらしい。
その決定は、裁判所でなされ、確定するのは、およそ72時間後。
つまり、拘束から約3日間、留置され、家族とも連絡が取れず、もちろん面会もできないのである。