どんだけ青天の霹靂やねん
2018年8月29日水曜日
そういえば、僕は、逮捕されてから、一度も尿検査をされていない。つまり、最初から[違法薬物の使用]は疑われておらず、あくまで、[組織犯罪の摘発]が、主たる目的であったのだろう。
[共犯者]についても、何度も同じ質問をされたが、残念なことに、僕は、人とつるむのが苦手で、オカンも答えていたように、「友達なんて、1人しかいない」のだ。しかも、その親友は、岡山で家庭を持ち、真面目なサラリーマンをしている。どれほど調べても、塵一つ出ないのだ。
2018年8月30日木曜日
情報がないため、よくわからなかったが、どうやら僕は、この時点で、[検察送致]が、決定されたらしい。つまり、[釈放]とはならず、検察に、罪状の決定が委ねられたのである。
そのため、裁判所において、捜査側から[勾留請求]がなされ、その審判を受けるために、捜査官に付き添われて、大阪地裁へ移送された。手錠に腰縄という出で立ち、自分の人生において、経験するとは夢にも思わなかった状況だ。人間の尊厳は、打ち砕かれる。ここで初めて、担当となる篠田検事と会った。
まだ若く、短髪にワイシャツ姿、意志の強そうな濃い眉に、知的なまなざし。まさに、[ザ・検察]といった雰囲気だ。そもそも裁判官や検察官は、司法試験に合格するだけではなく、その成績が、上位何割かに入っていなければなれないものだと聞くので、そら優秀なんやろなぁと、ぼんやり考えていた。
まだ弁護士も付いていないため、3名の裁判官の前で、捜査側から、一方的な[被疑事実]の書面が提出され、それに従い、あっさりと、[9月6日までの勾留]が、決定されたのである。勾留理由は、[被疑者が罪状を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある]とされていた。
パソコンも携帯電話もタブレット型端末もキャッシュカードもパスポートも全て取り上げられ、つるむ人間もいないのに、どうやって罪状を隠滅するというのだろう。
しかし、自分の身の上に起きたことに絶望しつつも、受け容れざるを得ない状況だった。この日の夕刻、2人の弁護士が、面会に来てくれた。両親が、伝手(つて)を探して依頼してくれたらしい。若くて見るからにスマートな東大出身の杉井弁護士と、堅実で誠実そうな雰囲気が漂う女性の佐田弁護士だ。