六 生命の母・豊かな海 1 別次元へと誘うクジラやイルカ

小笠原諸島は、小さな島々から構成されています。島の大きさは、人が住む最大の島・父島でも、伊豆諸島・大島の四分の一程しかありません。日本最南端の島・沖ノ鳥島に至っては、その面積はたった九・四四m2しかないのです。

島といっても、広い環礁の中に海面からの高さ一メートル弱の露岩が二つあるだけで、その岩が海蝕で削られて無くならないようにする保全工事で有名になりましたが、私は、第一回目の赴任の際、現地を垣間見ることが出来ました。

そうした島々の間には広大な海、この海に毎年十一月末から五月中旬にかけて、主にザトウクジラが繁殖のために沿岸海域に回遊してきます。そして、二月中旬以降は、子クジラを連れた群れを観ることが出来ます。そのザトウクジラは、他のクジラに較べて色々な行動を見せてくれます。

ザトウクジラのブリーチング

ウォッチングのツアーシーズンは、海が比較的安定する二月から五月の連休明けまでですが運の良い時には、体の三分の二以上を海面上に現しながら反転し、背面から凄まじい水しぶきと音を立てながら海面に落下する姿(ブリーチング)を目の前で観察出来ます。あたかも大海原でショーを観ているようです。

ところが、何故そうした行動をとるのかは、実のところよく分かっていないようです。ザトウクジラのシーズン以外の時期は、沖合で頭部の大きなマッコウクジラを観ることが出来ます。小笠原近海は年間を通してウォッチングが可能ですが、春以外は遭遇出来る確率は僅かです。

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