小説 歌人 西行 平安末期 2023.11.20 三種の神器の一つ、天叢雲剣が壇ノ浦の海原深くに沈んでいく…。 新西行物語 【第1回】 福田 玲子 弓張の 月にはづれて 見し影の やさしかりしは いつか忘れん この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 平安末期、天才歌人・西行が長年想い焦がれた女性がいた。忘れ得ぬその面影に惹かれて武士の道を捨て、家族を捨て、出家遁世し、生涯月と花を歌い続けた西行の軌跡をたどる。※本記事は、福田 玲子氏の書籍『新西行物語』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
小説 『にゃん太郎の冒険物語』 【第2回】 作間 瓔子 去勢というらしい。人間と暮らすためには、こんな犠牲を払う必要があることを思い知った。 二階の窓から外の景色を眺めるのも大好きだ。前の道路を走る車や、歩いている人の姿、さらには隣の畑のビワの木や電線に止まっている小鳥を観察したり、高い所から周りを見渡すのは気分が良い。特に冬は、陽当たりの良い部屋の布団の上で日向ぼっこするのが、僕の一番のお気に入りだ。ある日、干したばかりの智子ママの布団が畳の上に広げてあった。ふわふわで、とても気持ちがよかったので、そこにオシッコをした。黄色い染みが…
小説 『青春悼歌』 【第3回】 行燈 省益 東京からの帰省時にいつも途中下車して立ち寄った彼の三畳下宿 【前回の記事を読む】駅の売店でたまたま買った早刷りの夕刊で僕はNの早過ぎる、そしてあまりに酷く悲し過ぎる死を知った。Nは敵対するセクトに――それまでもよく、「どうせ、あいつはこれじゃろう?」などと、ひと前で平然と四本指を突き立てながら、まるで世間の常識を知ったかの様に意味ありげに話す、周りの差別的な大人たちの無神経で鈍感な会話や仕草に対しても、それを半ば受け入れるかの様に、僕は何の怒りも感じず抗…