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正の字
警察に今までの経緯を話すと、
「この天候ですぐに行けません。なので、くれぐれもその部屋からは出ないでください。私たち警察が行くまで、お友達と必ず一緒にいてください。1人にならないように、もしかしたら殺人の疑いもあります。犯人が近くにいるかもしれません。動物の仕業かもしれません。怖いと思いますが、できるだけ急いで行きますので、私たちが行くまで別荘の中で待っていてください」
と言われ、電話をきられてしまった。直子と舞は、震えが止まらない。沈黙のまま、時が流れる。
直子も舞も色々考え始める。
「千枝実がいなくなってから、私たち眠ってしまったよね」
と舞に声をかける。
「そうだね。2時間くらい。その間に何があったんだろう。なぜ、千枝実が……」
涙が止まらない舞。死んでしまった千枝実の姿を思い出し、なぜ千枝実がこんなことに……と、自分たちを責め始める。そのうち直子と舞の中に相手を疑う気持ちが出てきた。
そう思いたくないが、もしかして目の前にいるこの人が……犯人……では?
2人はまた、ウトウトと眠くなってくる。しかし、眠ってしまったら、千枝実のように殺されてしまうかもしれない。寝てたまるか……私は殺されない。直子も舞も、表情が変わってきて、険悪なムードになっていた。
時計を見ると、千枝実が遺体で発見されてから9時間も経っていた。
直子が
「舞お腹空かない? 食べないと私たちも倒れてしまうから、食事にしよう」
と言うと、
「うん」
と舞が頷く。2人はキッチンの方に行く。その時、奥からガチャンと物音がした。
直子がキッチンの電気のスイッチをつけると、目の前に汚くて服がボロボロで、手に包丁を持った50〜60歳くらいの男が立っていた。その男は、何かを話しながら近づいてくる。2人は恐怖で大声をあげた。
「キャー! 助けてー」
2人は思った。この男が犯人だと……。