家に帰ると 途端にいつもの世界

生きてる人間は 自分だけ

物と機械だけが 待っている

何でも思い通りの 俺の天国 

だけど 外にあふれてる花はない

鏡で自分を 眺めてみるけど

やっぱり 花はどこにも見えない

なくて良かったけど 良いんだけど

テレビをつけて 出演者を見る

あれ? とチャンネルぱちぱち変える

映ってる人 誰にも花がついてない

テレビに出る奴に 花はつかないとか

まあでも単に 映像に映らないんだろな

どこにも ニュースに出てないから

リアルな花じゃないんだろうし

急につまらなくなって テレビを消した

俺は独りぼっちで 頭まで狂いかけてる

花が視えるからって 何だと言うんだ

面白いって 言い合う仲間もいないし

俺はため息呑みこみ ベッドにもぐった

とにかく良く寝て 明日も仕事だ・・・

翌日は朝から 爽やかな天気だった

また 花を視るのかと身構えて出ると

・・・花を視るどころじゃなかった

いや これは何かの間違いだと思いたい

人の頭が 花になってた

大きな花一つ 服の襟からぼんと出てる

あっちは 花いっぱいの枝がわさっと

それに手が見えるはずの 袖からは

枝やらツタやら葉っぱやら

完全に 植物が服着て歩いてる

これ他の人には 普通に見えるんだろな

だってこの植物たち 普通に

スマホなんかいじってる 葉っぱの手で

表情なんか全然だけど もともと

電車で表情豊かな人なんて そういない

ドキドキしながら 会社に向かう

俺こんな中で 仕事できるのか

エレベーターの中 植物たち

誰が誰だか 分からない

一人が振り向いて 何かを言った・・・

俺は ぞわわと凍りついた

聴こえるのは 風が草木を揺らす音

何を言われてるか 分からない

あてずっぽうで お早うと言うと

そいつは うなずいてまた戸口を向いた