受付の窓から小さな声をかけた。
「先ほど伺った藤原ですが、保険証を持ってきました」
「藤原孝介さんですね。おかけになってお待ちください」
女は、よし子に会釈をして隣に腰を下ろした。
やがて看護師が姿を見せた。
「藤原さん、これが処方箋です。向かいに薬局がありますから。先ほど点滴を打ったので、薬は夜から服用してください」
「はい、分かりました。何も言わずにすぐに眠ってしまって……」
「眠ると楽になるでしょう。あっ、その靴箱の上のヘルメット、置いたまま帰られたようです」
「まあ、こんな大事なものを、すみません」
「現場からいらしたのですね。よほど辛かったのでしょう。お迎え呼びましょうかと言ったのですが、大丈夫ですって言われて」
女は、手渡されたヘルメットをそっと腕の中に抱えた。
その瞬間、よし子はヘルメットが孝介の頭に見えた。頭が女の腕の中に抱えられた。
ふっと血の気が下がって、ソファーに横になった。
「どうしました?」
看護婦が急いでよし子の脈を取った。
その横に肌の美しい女がいて、孝介の頭を抱え、心配そうによし子を見ていた。