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第1章 小さな政府と[民活]――民事訴訟を促して社会問題を解決

ほかにも「民活」のための制度は多数

民事訴訟を起こしやすくする制度としては、「弁護士の成功報酬制度」も見落とすことはできません。

訴訟で勝訴するか、和解で相手方から何がしかの賠償金を受け取って初めて、原告は弁護士に費用を支払うという仕組みです。訴訟のための資金が全くなくても訴訟を始めることができ、低所得者でも訴訟を起こしやすくなっています。

弁護士への報酬の相場はケースバイケースですが、受け取った賠償金の30%程度とも言われています。賠償金額が大きければ成功報酬の金額も大きくなり、訴訟を請け負う弁護士にとってのインセンティブになります。

賠償金が得られなければ、弁護士への報酬は不要です。弁護士が成功報酬という形で訴訟の結果についてのリスクを取り必要なコストを立替える代わりに、最近では投資ファンドがこれを肩代わりするケースも多く見られます。

訴訟ファンド、訴訟ファイナンスと呼び名は様々ですが、要するにノンリコース(つまり資金の受け手である原告や、弁護士事務所には、勝訴したり和解で賠償金を受け取った場合にのみ返済義務が生じ、結果についてのリスクは投資ファンドがとる)での貸付で、訴訟ビジネスへの投資です。

この種のファンドは数多くの案件を処理している経験から、担当弁護士以上に訴訟の結果についての見通しができるというわけで、案件を取り上げるかどうか、またその条件はどうか、直ちに決断ができます。米国の証拠開示手続き(書類提出、証言録取、質問書)も訴訟を起こす手助けとなっております。これについては第7章で詳しく説明します。

日本には米国の証拠開示手続きのように、情報を強制的に開示させる制度も存在しません。争っている相手から必要な情報を引き出すことは、相当困難であり、訴訟を諦めざるを得ない大きな壁となっています。

「懲罰的損害賠償」、「クラスアクション」、「証拠開示手続き」……。

これら米国独自の制度は日本ではなじみが薄いためか、日系企業が訴訟に巻き込まれた時、対処の仕方がわからず悪い結果を招きがちです。