なじみがないがゆえに大やけどする日系企業

すでに「内部告発訴訟」(Qui Tam Action)により東洋紡、米国オリンパスが訴えられたことは述べましたが、「クラスアクション」でも、サプリメントに含まれるL -トリプトファンが健康被害の原因として訴えられた昭和電工、糖尿病治療薬「アクトス」に発がん性があるとされた武田薬品、エアバッグの欠陥により訴えられたタカタなどの例があり、高額の和解金で解決しています。

「証拠開示手続き」で年齢差別のやりとりが発覚し、「懲罰的損害賠償」を課せられた神崎製紙アメリカ(以下米国カンザキ)の例もあります。この制度を理解せず不用意にメールを書いたため痛い目に遭ったケースです。

「自分たちに不利な情報は出さなければ大丈夫」と実際に思ったかどうかはわかりませんが、米国の証拠開示手続きの「すべての情報を開示させる強制力」を甘くみていたことは間違いないでしょう。

日本からアメリカに向けた書類のみならず、日本の社内での例えば稟議書なども場合によってはアメリカの訴訟における証拠として開示の対象になることも心得、その取り扱いには細心の注意を図るべきでしょう。

ほかにも米国の制度の理解不足で大やけどを負った日系企業はたくさん存在します。私が、たとえ米国の制度であっても、日本人もよく理解しておく必要があると訴えるのはこのためです。

日頃からの準備・対策については第7章「トータルリスクマネジメントとコンプライアンス」で具体的に触れていきます。