この話に深入りする前に私の長年の共同研究者であるフランク・ルセッティについて少し話したい。科学者としての私の存在はすべて彼のお陰である。

私は私たち2人の性格をよくトーマス・ジェファーソンとアレキサンダー・ハミルトンに例える。この2人はよくアメリカ人の性格を形成する2つのDNAとして説明される。

ジェファーソンは自由を重視し、分権制による政治を主張し、他方ハミルトンは混乱を避けるために強い中央集権的な政治であるべきという信念を持っていた。

ジェファーソンは批判を気にしなかった。ハミルトンは批判されるとカンカンになって怒るという性質だった。そのためか彼は1804年に当時ジェファーソンの副大統領だったアーロン・バートと名誉を守るため決闘し、死んでしまった。

私は複数のセンターを使って調査することが必要だと認識しているし、遠慮のない活発な議論が好きで、人にアイデアを批判されても気にしないので、自分はジェファーソン的だと思っている。

フランクはハミルトンに似ていて、科学はまとまった主張があったうえで語られるべきだと考え、もし自分が不当に批判されたと思ったら憤りで毛を逆立てるのだ。多分、男性中心の科学の世界では女性である私は相手にされていないといつも感じていたからかもしれない。

でも感心するほどの優秀な男性科学者にはあまりお目にかかったことはない。例えば、フランクはジョン・コフィン教授からどう思われるか気にするのだが、ヒトレトロウイルスが存在するかという重大なテーマでも、コフィンがほぼ40年間的外れな学者であったことをフランクが証明しているのだ。

(エイズウイルスちゃん、あんたら3500万人も殺したヒトレトロウイルスだもんね!)