【前回の記事を読む】「付き人になりきったお世話」で気づけた入居者の気持ち

第1章 入居者と暮らしを創る30のエピソード

5日目 気持ちを分かち合う

私はまず、ホーム内で職員と相談し、比較的お元気な入居者の方々と数名の職員と一緒に、老人ホームのすぐ側の神社にお散歩に行くようにしてみました。やはり外の風に触れて本当に気持ちよさそうです。

そして、清水さんの胸の内にある「不安感」に対応するために、居室で丁寧にお話をするようにしました。そうすると清水さんが少しずつ、胸の内を明かしてくれました。

それは「今、自分は比較的元気だが、寝たきりになってしまうのだろうか」とか、「自分も認知症となってしまうのではないか」という、漠然とした不安感に苛まれていたとのことだったのです。

清水さんのお話を伺いながら、私は老人ホームへの入居にあたって、やはり身体的状況が近い方同士で人間関係を創り出すお手伝いをしていくことが、いかに大切であるかを気づかされました。そして、入居者の気持ちを考えなければならないと思いました。

そのようなやり取りがあってからというもの、清水さんとは、より心の結びつきが強くなったと感じています。今や、お互いに目線が合うと「手を振り合う仲」です。

私にとって入居者の皆さんは、大切な私のお父さん、お母さんです。苦しいことがあれば私に声を掛けてください。その心の苦しさを聴くことによって、私も苦しさを一緒に背負います。

6日目 花嫁に向けられた銃口

老人ホームの入居者の皆さんは、私にとってお客様であり、大切な家族です。しかも、私より数倍も様々な経験をされてきた人生の先輩ですから、いろいろなことを教えていただきます。

そのような時は、内心「今日も良い話が聞けた、また自分も少し賢くなった」と嬉しくなります。ここでは、自分が歴史の中に引き込まれてしまうような話をご紹介したいと思います。