【前回の記事を読む】【SF小説】「冥界というのは地下深くの都市のこと」気づけばそこはどこまでも続くエメラルドの山で…

惑星キチェケ

地底都市フンハウ

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山脈を切り抜いて作ったような街が見えてきた。運河が街を囲み船が行き来している。

風が吹いた。さっきから風は必ず一定で必ず一方のように思える。

地底で風が吹くとは思っておらず風力計は所持していない。磁力計はぐるぐる動くだけで意味をなさない。動き回って安定しないのも特徴だ。

喉が渇くので川の水を汲んでフィルターに通して飲む。鉄分が多い気がする。砂鉄の砂漠があるくらいだからミネラルが豊富なのかもしれない。

街まで歩く。

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インカの町並みのようなカミソリの刃すら通さない石畳の町並み。都市は通路があって運河がきめ細かく配置されている。

住人がたくさん居た。

2種類いる。その顔は体毛がない。(髪の毛もなく、眉毛もない、髭もない)目は大きく鼻は穴だけ開いていて口は顎まで裂けていて体格がでかい。もう一方は体中に羽が生えている。口がまるで嘴だ。

あと、皆が異様に頭が長い。なるほど、ケツァルコアトルとテスカトリポカだ。鷲の擬人化と蛇の擬人化。

住人は何か言っている。ケチュア語に似ているがどこか違う。

ワルテル「アタワルパ。翻訳してくれ」

アタワルパ「珍しい。地上の人が来たと言ってます」

ワルテル「私たちは地上からきました。この世界のことを紹介してくれますか? と翻訳してくれ」

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信介「ここはどこなんですか? と翻訳してくれ」

ワルテル「だそうだ。ここでの発言は全部翻訳してくれ」

アタワルパ「地球のコアの近くの小さな泡みたいなところですと言ってます」

信介「そんな馬鹿な。熱はどうなる? そんな地底深くなら7000度近い熱ということになる。ここは確かに高温だがおよそ30度くらいの温度。それに引力だってどう説明するんだ?」

アタワルパ「冷たい太陽が見えないけれど斥力と明るさをもたらす。斥力は周りをはじき空間を作り我々はまるで空間の周りを引力のように外側にはじく。冷たい太陽自体は見えないけれど反射した地面からの光で認識できる……と言ってます」

ワルテル「冷たい太陽って何だ?」

アタワルパ「わかりません。ですが冷たい太陽は他より限りなく早い時間をもたらします……と言っています」

信介「この隔離された場所で風はどうして起きる?」

アタワルパ「冷たい太陽は形が歪でゆっくり自転している。だから風ができると言ってます」

ケイン「……じゃあ」

アタワルパ「今日はもうこのくらいで勘弁してくれと言ってます」