18

この世界には夜がない。

ワルテル「宿屋みたいなのはないか聞いてくれ」

アタワルパ「この閉鎖空間に宿というシステムはない。

運送業者だって統治者だって泊まるのは他人の家に客として泊まるよと言っている」

ワルテル「誰か我々を泊めてくれる人は居ないか聞いてくれないか?」

アタワルパ「この地を治める皇帝が特別に招待してくれるそうです」

19

皇帝の屋敷は特別ここの庶民より優雅というわけではない。というより庶民が皇帝の屋敷のように立派な石畳に住んでいる。あえて言えば皇帝の屋敷は広い他は庶民と同じだ。

スコット「地上から来た旅の者です。この屋敷に招待していただきありがとうございます。地上人を代表してお礼を申し上げます。……文化交流として我々の世界のビスケットと干し肉でも食べませんか?」

皇帝は鶏と言えば失礼だが頭から背中に赤い羽のような冠をかぶり服は着ておらず模様の描かれた裸で藁の腰巻きをはいている。体中に羽毛が生えている。

皇帝が干し肉を噛み何かを言った。

アタワルパ「硬いと言っています」

地底都市の住人は口は裂けているが歯はなく嘴のようだ。

そういえば、……この姿で日本に現れれば河童として定着しそうだ。

皇帝は次にビスケットを囓り何かを言う。

アタワルパ「これは大変おいしいと言っています」

この都市の料理が運ばれてきた。

シダの葉だろうか? 緑の粉とシメジのようなキノコと銀杏の実をドロドロなスープに加工したもののようだ。木の器に木のスプーンが備え付けられている。

食べてわかったが魚を干して粉にした物が入っている味がする。味はともかく。しかし、肉を食べる習慣が無さそうだ。

それぞれ個室に案内されている。休息にあてがわれた部屋は藁の絨毯のようなものが広げてあるが温度が一定のため毛布で寝るなどの習慣はないらしい。

夜がないので窓からいつまでも光が届き窓の板を閉じると暗くなり睡眠をとることにした。