そもそもマスコミの無責任体質と変わり身の早さには注意しておく必要がある。赴任時には前述の見え透いたおべんちゃらを並べて神輿を担ぎ、期待外れに終わった途端、担いでいた神輿を大地に叩きつける。この掌返しに反省という言葉は無い。
日本に赴任してくる海外の大使紹介も同様で、”知日派”、”親日派”、或いは”反日派”など自分に都合の良い勝手な基準で日本にとって良い人か悪い人かを色分けして紹介したがる。先日の新駐日英国大使の紹介は、「日本の大学に留学経験あり。日本語は流暢。奥様は日本人。以前日本駐在歴六年。政界・財界にも知己多し。知日派。親日派」。
その論調の底にあるのは「こういう経歴の人は『日本大好き人間のはず』だから日本のことを悪く言うはずがない。日本にとって良い人が来てくれた」という手前勝手なおめでたい思い過ごしだ。
逆に「日本に厳しい態度、発言が多いからこの人は反日派」と単純にレッテルを貼って警戒するのも根っこは同じだろう。
特に中国、韓国の大使に対して区分したがる傾向があるのは悲しいことだ。知日派・親日派の人でも時と場合によっては厳しい態度を取るし、反日派の人でも協調的な態度を取る時もある。マスコミに踊らされない自分の考えを持つことが如何に大切かを反面教師で教えてくれる。我輩のご主人は三識の内、中学校でも兵学校でも首席で卒業したそうだから知識はあったが見識があるとは思えない。
胆識となると全くお手上げ。これでは組織の長たる資質はもちろん、外交交渉の修羅場を潜る上では全く頼りにならん。
第五に、交渉に耐え得るだけの英語力もないのに、通訳を使わず自分で対応したがる。我輩は言葉というのは所詮ツールにしか過ぎず、肝心なことは話す中身であり、日本語でしっかりしたロジックで理路整然と自分の考えを相手に伝えることが交渉の全てだと信じている。
聞こえは良いが要するに数年間米国にいただけで自分の考えをきちんと英語で伝えることも満足にできないまま、大統領との個人的関係に過大な期待を掛けて外交交渉に従事することは誤解を生むだけで危険極まる行為。我輩のご主人の見識を疑うのはこういうところだ。