「チモシーは意外と少なくないか」

高橋はコドラードの中をじっと見つめながらそう言う。佐藤もそうだなぁと同意するようにつぶやく。

「確かに。二五%とは言わないけれども、五○%はないな」

「それじゃあ四〇%ってところではどうだい?」

山川は落としどころを探るように言う。

「じゃあ、残りの二七%はシバムギかい。一/四以上シバムギってことじゃないか」

そう言うと、高橋は早川に尋ねた。

「早川先生、この草地は更新するときに、除草剤を撒いていないとかないですよね」

「いや、草地更新する前と、牧草の種を撒く前、二回は除草剤をかけている」

早川は続けた。

「除草剤をきっちりかけても、シバムギはすぐに生えてくる。酪農家の草地でも同じなんだ。困ったことだがこれが実態なんだ。一〇年前よりもシバムギがひどく生えてきている気がするよ」

早川の言葉をじっと聞いていた山川は、ふと浮かんだ疑問を口にする。

「草地更新しても、シバムギが生えてくる。この原因は何かあるんですか」

「いや、最新の研究成果でもそれはよく分かっていない。もし分かれば、それは大発見だなぁ。草地更新しなくてもよくなるかもしれない。何しろ、シバムギとリードカナリーグラスがはびこることが、一番の問題になっているからね」

「じゃぁ、農業事務所所長はいい加減なことを言ったってことですか」と、佐藤が口を挟んだ。

「いや、いい加減でもない。草地更新すればシバムギなんかの雑草は一時的には減るからね。問題は、五年もすれば雑草がはびこって、草地として使いものにならなくなることだ」

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