第三章 満月
思い出集め
忘れてはいけない思い出がある
夫と過ごしたあの十九年
忘れてはいけない思い出なのに
ミイラの布のように
ぼろぼろと
剥がれてどこかに行こうとする
昨日のつまらない出来事は
つまらないのに心に残っている
ああ 自分に腹が立つ
昨日のつまらないことなんて
掃いて捨ててしまい
思い出をかき集めて
思い出に浸って
今の私の時と
歩かねばならないのに
そうしなくてはならないのに
からんころんと
空き箱のように音を立てて
大事な思い出が転がっていく
つまらない昨日のことは
明日には消えることがわかっている
忘れてはいけない思い出を
たとえ欠片 になっていても
拾い集めて 拾い集めて
集め続けて
私が果てる先までも
共に生きなければ