【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第三章 満月

君への道

中学時代の淡い恋

卒業記念にデートに誘われた

でも行かなかった

高校時代の青春の恋

ラジオに曲とメッセージを送ってくれた

必ず聞いてくれと言われたけど

マイラジオなんて持っていなかった

大学時代の学生運動の中の恋

頭の良すぎる彼についてデモ行進

本当は何もわかっていなかった

思想の語りかけより

文学や映画のほうがよかった

社会人になり君に出会った

君は誰かと別れ

私も誰かと別れ

生涯の相手と決めた

建築士で仕事バカの君

約束の時間に来たことがない君

やんちゃで強気の君

世話好きでにぎやかな君

スキーがうまくて歌が下手な君

私を選んでくれた君

「ともに白髪が生えるまで」と

約束したのに十九年しか

守らなかった君

私の愛した君