あなたがいたから
さとさん
又この様な事もありました。友人の娘さんが、生まれながら心臓が悪かったのですが、十九歳で亡くなってしまい、その葬儀に行った時の事です。彼と一番後ろの席に座っていたのです。葬儀が始まり、来ていたのも友達が多く、皆若かったせいか、全員が号泣していた時、すっと私の隣の席に、一人の女性が座ったのです。
でも会場の雰囲気が雰囲気だったので、じろじろと見る訳にもいかずにいたのです。
「誰だろうか」
と思いながら、ちらっと見た時です。びっくりしたのを覚えています。その人は、数年前に亡くなった、友人のお姉さんにそっくりだったからなのです。
「世の中には似ている人もいるのだ」
と思っていたのですが、出棺の時、
「何処にいるのだろうか」
と必死に探しても、その人の姿を見る事はありませんでした。その後友人に、その事を伝えると、
「え、姉に似た友人などいないよ」
と、言われたのです。
「ではあの時私が会った人は誰なのだろうか」
と。その人は、すすり泣きをして、必死に悲しみを堪えていました。今でもあの時の事は、誰なのだろうかと不思議に思っているのです。
彼の死、祖母の死、両親の死、野良猫達の死を見つめ、【生】あるものは、いつかは【死】が訪れるのだと、つくづく思い知らされた感じです。
野良猫達の死から、まさか十年もしないで元気だった彼が急に病気になり、二年も経たないうちに亡くなってしまうなんて、人生の終わりは急に来て、あっけなく終わりを遂げてしまうものだと感じました。